B社様

<概要>
電子カルテシステムを開発・販売している企業の製品をクラウド化するにあたり、電子カルテの利用シーンが変わっていくため、その製品でマルチデバイス対応が求められていた。マルチデバイス対応を前提とした新しい事業戦略を立案・実行するために、お客様のプロジェクトにDXコーチ及びファシリテーターとして参画し、デザイン思考アプローチを用いて製品のバリュープロポジションと戦略、サービス体験を描くためのワークショップを運営した結果、必要な機能が要求として整理された。

    

<ワークショップと手法>
・課題分析(マインドマップ)
・プロジェクトの目的の明確化(インセプションデッキ)
・環境分析(PEST、3C、SWOT)
・提供価値の明確化(バリュープロポジションキャンバス)
・戦略立案(STP、4P)
・仮説検証(オポチュニティバックログ、市場データ、ヒアリング)
・ユーザー像の明確化(ペルソナ)
・業務分析(サービスブループリント)
・要求整理(ユーザーストーリーマッピング、非機能要求分析)

<スケジュールと進め方>
支援期間は4ヶ月で、以下のスケジュール感でプロジェクトが進行した。
2021/06 プロジェクトの立ち上げ(キックオフ、課題分析、目的の明確化)
2021/07 マーケティング分析(環境分析、戦略立案、仮説検証、提供価値・ユーザー像の明確化)
2021/08 業務分析(お客様の関係部署へのヒアリング、業務フローの作成および分析)
2021/09 要求整理(ユーザーストーリーマッピング、非機能要求分析、プロトタイピング)

ウォーターフォールのように上流から下流まで工程ごとに進んで文書ベースでレビュー・承認を受けたら次の工程に進むといったやり方は取らず、ラフな案や仮説ベースでアイデアを整理していき、必要に応じてリサーチや検証作業を入れて確認した。上記のワークショップも都度アップデートをかけていき、確証が持てた時点でFI Xし、要求の洗い出しを行った。また、お客様が未経験のプロセスや手法についてはその都度トレーニングを行った上で、ワークショップを開催した。

<工夫と成果>
・マーケティング分析については、よく使われるフレームワークとしてPESTや3C、SWOT、STP、4Pを使って全員で話し合いながら整理することができた。ワークショップ中は度々疑問や不明点が出てくるため、オポチュニティバックログで仮説を管理し、検証を行なって正しい情報が判明したら、マーケティング情報もアップデートするようにした。
・Miroをうまく活用し、ワークショップを行った結果を残すことで再度共有しやすくなる、思い出しやすくなるというメリットを享受できた。また、視覚的に判断できるため共通理解が持ちやすく、スムーズな会話をするための助けになった。
・関係者が多いため会議調整が大変だったが、窓口にあたる部署以外に専門業務を担う部署のキーパーソンから業務を聞き出すことが重要であると考えたため、営業やカスタマーサポート、保守などの部門とも根気強くヒアリングを行い、業務や困りごとを伺うことができた。
・当事者であるお客様が実は業務のことをわかっているようでわかっていないことが多かった。サービスブループリントを用いた業務分析では、様々な部署のキーパーソンから詳細な情報を伺って書き出し、業務フローを作成・整理したので、初めて知ったことも多く、我々支援側だけでなく、お客様にとっても業務への理解が深まった。
・要求整理については、まずサービスブループリントで業務を理解した上で、ユーザーストーリーマッピングを使ってユーザー体験から機能を洗い出すことができた。また、体験の流れでは抽出しにくい非機能周りは別途ワークの時間を確保し、IPAが公開している非機能要求グレードの観点から技術者中心にアイデアを出し整理することができた。
・はじめは勝手がわからないため、自分が主体的に動いてファシリテートを行なっていたが、お客様がオーナーであるため、コツを掴んでワークが慣れてきたらお客様に主体をバトンタッチし、プロジェクト後半ではコーチングに徹することができた。
・4ヶ月という短い期間でこれだけの仕事量を終わらせるためにはお客様にも相応のリソースを捻出していただく必要がある。そのためにはプロジェクトが始まる際に「お客様があくまでも主体で動く」「時間を必ず捻出する」というお客様側のコミットが重要であると改めて認識した。