<背景・目的>
R社では、事業成長に伴って組織規模が拡大する一方で、組織としての一体感や社員エンゲージメントに課題がありました。共通目標や価値観が十分に浸透しておらず、社員同士の横のつながり、ナレッジ共有、人材育成、キャリア形成などにおいて、組織として改善すべき論点が顕在化していました。
今後の組織変革に向けてMVV(Mission・Vision・Value)を再構築し、評価制度や成長支援と連動させながら、社員一人ひとりが同じ方向を向いて行動できる組織づくりを進めようとしていました。しかし、MVVを掲げるだけでは日々の行動にはつながりにくく、社員が自分事として理解し、行動変容を促す必要がありました。
AX Consultingでは、MVV浸透に向けた第一歩として、社員が自分事化できるように、A3ワークショップの企画・準備・ファシリテーション・振り返りを支援しました。MVVを会社から示された理念に留めず、社員自身が組織の現状や課題を考え、今後の行動につなげられる状態をつくることを目的としました。

<A3ワークショップ>
A3ワークショップとは、TOYOTAのA3と呼ばれる問題解決フレームワークと、IDEOが推奨するデザイン思考を組み合わせ、集合知をうまく活かして実施するワークショップのことです。課題の発見から定義まで、解決策の洗い出しから絞り込みまで、ステップに沿って発散と収束を繰り返すアプローチであり、より多くの人にワークショップに関わってもらうことで集団の叡智を結集してより良いアイデアを生み出すアプローチでもあります。
課題に対してファクトやデータに基づき現状を把握し、理想的な状態と比べどのくらいギャップがあるかを分析します。達成可能なゴールに対して解決策を決め、計画に落とし込みます。
A3フォーマットの各パーツの説明は以下の通りです。
テーマ ・・・ 今回のワークショップのテーマを決めます。
背景 ・・・ なぜこのテーマが選ばれたのか、発端となった問題意識や、問題発見に至るまでの経緯、前提を記載します。
現状把握 ・・・ 現在どういう課題があるかを記載します。ファクトやデータを元に説明します。
目標設定 ・・・ いつまでに何を達成するのか、ゴールを明確化します。
要因分析 ・・・ 現状把握で挙がった課題について要因分析し、真因を突き止めます。
対策立案 ・・・ 目標を達成するためにたくさんの解決策のアイデアを出し、ビジュアルに表現します。その後、有効なアイデアに絞り込みます。
計画 ・・・ 対策に基づいて計画を立て、スケジュールに落とし込みます。
フォローアップ ・・・ 予定通り実行されるように、この取り組みの責任者を決め、定期的に進捗を確認したり計画を見直す場を設けます。
<進め方>
まず、A3ワークショップの準備期間を設け、経営陣との事前打合せ、参加者向けの事前説明会、参加者への個別ヒアリングを実施しました。あわせて、R社の方針資料、MVV、エンゲージメントサーベイの結果などを確認し、当日の議論に必要なインプットを整理しました。
次に、MiroでA3ワークショップ用のボードを作成し、背景、現状把握、目標設定、原因分析、対策立案、計画、フォローアップまでを一貫して整理できるA3フォーマットと作業スペースを準備しました。また、当日の進行アジェンダ、タイムスケジュールなどを事前に整え、参加者がスムーズに議論に入れる状態をつくりました。なお、A3のテーマは経営陣にも相談した結果、「MVVの自分事化」となりました。
ワークショップ当日は、参加者がオフラインで一つの会場に集まり、終日ワークショップを実施しました。冒頭ではアイスブレイクゲームとしてマシュマロチャレンジをチーム対抗戦で実施し、参加者同士が打ち解け、前向きに議論できる雰囲気をつくりました。
その後、A3フォーマットに沿って、経営陣からの方針説明、ディスカッション、ブレインストーミング、個人ワークを組み合わせながら、組織課題の可視化とゴール設定、要因の深掘り、解決策のアイデア出しと絞り込みを進めました。
一部のワークは後日オンラインで延長し、最終的にA3を完成させました。ワークショップ後には参加者アンケートを実施し、さらに経営陣との振り返りを行うことで、成果物の確認と今後の進め方の整理まで支援できました。

<手法>
本支援では、基本的に以下の方法論を組み合わせて取り入れました。
・A3フレームワーク
・デザイン思考
他にも、課題の要因を分析するために マインドマップ を使用したり、ソリューションのアイデア出しでは短時間にビジュアルで表現する Crazy 8 を使用しました。また、振り返りではスクラムのレトロスペクティブでよく使われる KPT を用いました。
<工夫・成果>
A3ワークショップにおける成果物は A3 です。このアウトプットを完成させるために、より多くの人を巻き込んでコラボレーションを図り、ワークと議論にエネルギーを費やしました。
A3ワークショップでは、単にMVVを説明する場ではなく、参加者自身が組織の現状や課題を考え、MVVと自分たちの行動を結びつける場にすることを重視しました。事前ヒアリングやサーベイ結果の確認を通じて、予め参加者の問題意識を把握したうえで当日の設計に反映し、現場感のある議論ができるようにしました。
また、参加者が安心して発言できる場づくりにも注力しました。アイスブレイクにより参加者同士の緊張をほぐし、グランドルールを設けたうえで、互いの意見を否定せず、前向きに議論できる雰囲気をつくり、心理的安全性を高めました。これにより、普段は接点が少ないメンバー同士が組織課題について率直に意見を交わし、共通認識を形成する機会となりました。
A3ワークショップの結果、参加者の間でMVVに対する理解と共感が高まり、組織として取り組むべき課題やアクションが可視化されました。特に、横のつながり、ナレッジ共有、育成、キャリアパス、ブランディング、スキルアップといった論点について、具体的な施策と担当者、実行時期を整理できたことは大きな成果でした。
さらに、ワークショップ後も確実に継続できるように、責任者のアサインや、定期的な進捗確認・計画見直しの場の設定など、フォローアップの仕組みを設計しました。これにより、MVVを一度考えて終わりにするのではなく、日々のコミュニケーションやアクションの実行を通じて、継続的に浸透させていくための土台をつくることができました。実際、R社はAX Consultingが関わっていない今も、継続して取り組み、社員一人ひとりが行動につなげているようです。
